膨らむひとりごと

日々の散文

近年No.1ドラマ

Netflix製作の「Orange is the new black」

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7シーズン全話完走!!本当にこのドラマはおもしろかった。一言でおもしろいだけには集約できない、脚本も演者も素晴らしかったです。全員に拍手がしたい!!アメリカの女性刑務所内で様々な人種、年齢、出自の人々が錯綜する様が描かれています。

Netflix初期の代表作とも言える作品で、少し前にエミー賞ゴールデングローブ賞を受賞しているのも至極納得です。

原作にPiper Kerman著の「Orange is the new black」という獄中記があり、彼女の実体験や事実に基づいた内容も多く含まれているので、単純に架空の設定として受け入れ気楽に見られるドラマでないことは確かです。でも、その分本当にじっくりと色々な考えや思いを巡らせて作品にグッと入り込め、作品世界の構築力の凄まじさに感激しました。

 

ということで、〈OITNBのここがすごい〉を紹介

 

シリアスさとコメディ要素のバランス

獄中話なので、ドラック、暴力、性行為、パワハラなどの要素が多く、見た目にも内容にもキラキラと綺麗な世界はまず出てきません。人間関係にはいつも駆け引きや序列、人種の壁があり、弱肉強食の世界。前情報なくいきなり見ると、衝撃も多くあります。刑務所という小さな世界の中にはその世界の秩序があり、様々なパワーバランスを保ちながら、いかにして日々の生活をしていくかが勝負。でもその中に仁義や人情も必ず存在する。刑務所に入っている人=悪という一辺倒な描かれ方ではありません。シリアスな内容と同時に人間としての愚かさや面白さ、皮肉など笑えてしまう要素もうまく描かれています。

 

登場人物の多さと書き分け

全7シーズン、1シーズン13話、1話約1時間。多少の入れ替えはありますが、レギュラー登場人物が少なくとも30~40人はいます。白人・黒人・ヒスパニック・アジアなどの様々な人種。普通のドラマで描こうとすると絶対にどこか端折られたり、ご都合展開が入れられたり、基本的に主人公中心でちょいちょいレギュラー陣が絡む話の展開になりがちかなと思うんですが、全っくそんなことない!!!!本当にそれだけでもすごいことなんですが、個々の人物のバックストーリー(どんな生い立ちを送ってきたか、どういった経緯で犯罪を犯してしまい、刑務所に来ることになったのか)が肝心で、それがとても大切に描がかれています。その上で大所帯が複雑に絡み合っている人間模様。本来現実の人間関係なんてそんな分かりやすく分別もされていないし、切れたり繋がったりの繰り返しだと思うんです。それがちゃんと消化されています。

 

主人公が主人公ではない

主人公パイパーを軸に一応話は進みます。特に1~2シーズンくらい。が、どんどん話が進むにつれて、登場する各キャラそれぞれの視点や分岐点、出来事にもフォーカスされるので、良い意味で主人公って誰だっけ?となります。各々のストーリーが切り分けられるのではなく、点と点でそれぞれが繋がるので現実的な人間関係として見られてすごくリアル。ちなみに、わたしはこの主人公のパイパーのことが嫌いです。本当に見てるとどんどん腹が立ち、イライラし怒りが湧いてくるんですね。どこかのネットアンケートでも嫌いなキャラランク1位でした(笑)ちゃんと意図的に狙っていると思うけど、ここまでそう思わせる脚本と俳優さんのお芝居はものすごいものですね。

 

社会問題や人種問題の提起

刑務所内の実情を描いていますが、肝心なのは「なぜ犯罪者になってしまったのか」の方だと思います。不法入国・移民・人種差別・貧困・劣悪な家庭環境・宗教観・精神疾患などの現実社会に溢れる問題によって「犯罪者にならざる終えなかった女性」という表現の方が適切なのではないか、本当の悪事とは何なのか?そんな疑問が付き纏います。アメリカは自由の国、人種の坩堝という表現がありますが、その自由を取り仕切り、善悪を捌き決定権があるのは階級社会の中での富裕層であり権力者、特に白人で、そして男性です。この無くならない差別と完膚無きまでの不条理さこそ、この作品が一貫して問題として取り上げ、伝えたかったことではないかと思います。だからこそ、弱者という立場にやり込められた犯罪者の彼女たちの背景や逞しく生き抜く姿がとても生々しく、悲痛さと希望が入り混じり、見る人を惹きつけるのだと思います。

 

受刑者と「そうでない人」という線引き

前項の内容にも関わっていますが、結局受刑者とそうでない人の差は何なのか。そんなことを考えさせられます。一歩間違えれば自分が受刑者側になることもあり得ます。そうした時に自分には全く関係ない世界だと言い切れるのか?犯罪を犯してなければ囚われないのか?答えはノーです。例えばわたしがアジア人女性としてアメリカに行き、何らかの事件や事故に運悪く出くわしてしまった場合、何も関係なく無罪だとしても取り押さえられ、刑務所に入れられる可能性は普通にあります。それはなぜか?アジア人で女性だからです。マイノリティーで、弱者です。理不尽極まりないですが、本当にそれくらいのレベルで罪を着せられる恐ろしさは現実にあるということなんです。そういった理不尽さがこのドラマの中には溢れているんですね。近頃は「Black Lives Matter」の運動なども記憶に新しいですが、脚色はあっても、現実に起こり得る。だからこそ三者目線のみでこの物語を見ることはできないし、悔しくて悲しくて落ち込んで途中で見るのをストップしてしまうくらいストーリーそのものに説得力がありました。

 

刑務所を管轄する者

刑務所でも受刑者のみで話が進むわけではありません。看守の劣悪さや運営する媒体の金銭問題もひっくるめてです。看守だからといって正義感を持っていることは全くありませんでした。むしろ物語のヒール役はこっちの方が多いんじゃないでしょうか。有名なスタンフォード監獄実験というものがありますが、犯罪者と看守でランダムに配役を分け、その役で生活をさせた場合、看守側の暴力性が高まり、非人道的になることが報告されています。この実験で分かるのは、役割を与えられているうちに序列を勝手につけ、看守はより看守らしく、受刑者は受刑者らしくなってしまうことです。つまり、看守である方が偉く、受刑者は罪を犯している者だから、何をしても、どんな危害を加えてもいいんだ。という様な心理状況に変貌してしまうんですね。これは実験だけでなくこの作品内でも常に問題として立ちはだかり、実際の刑務所内でも起こっていることだからこそ、痛烈に描かれていたのだろうと思います。

 

俳優の演技力の高さ

これは本当に最重要項目かもしれません。脚本演出の素晴らしさと共に、演者の素晴らしさに脱帽します。何よりも、出演している俳優陣がそれぞれ実在するように感じられるんです。〇〇という役を△△という役者が演じている、ではなく〇〇というキャラクターが実在している、としか思えないんです。これは、ものすごいことだと思います。演技力の高さは言うまでもないですが、人間としての醜態や愚かさ、浅ましさ、汚さと同時に愛らしさや美しさまでも多面的に、立体的に表している。そういうことに俳優陣が体当たりで全力で挑んでいたからこそ為し得て、作品としての厚みが生まれたのだろうと思います。もう、本当にこればかりは見てもらうしかないですが、本当に素晴らしいです。日本人でこういう俳優はいるのかな。。

 

 

ちなみに私が特に好きなのは以下二人。

 

軽度の知的障害があるためにクレイジーとも揶揄されたが、その純粋さと素直さでシリーズにおいて要になったスーザン

 

どんな苦境でも最後まで諦めず、賢さとユーモアを忘れずに己の道を切り拓いたテイスティ

 

こうして書くと結構シリアス、というか重ためなのかと思われてしまいます。確かに重たい部分が核にはありますが、活劇としてこころを掴まれますし、じぶんの日頃見ている世界だけが世界ではないんだとより一層感じることができます。それにテンポよく進むので、見ていくとどんどん先が気になり、見た後にどの人物にもどうしようもないくらいの絶望感と愛情が生まれます。なかなかそういうのって少ないと思うので、本当におすすめです。

生きることって、いろんな姿や考えや感じ方があります。それをこういった作品で感じられるということが本当に有り難く、エンタメという言葉一口には言い切れない創作の良さだと。

ちょっと長いけど、ぜひぜひぜひ多くの人にみてもらいたい作品です。

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